2001年7月18日

山口市長
佐内 正治  様

要請書
 

 貴市におかれましては、日ごろより障害福祉の推進にご尽力賜り感謝申し上げます。
 私たち「やまぐち障害者解放センター」は、障害者と健全者が共に生きる社会をつくるために、障害者と健全者が共に行動する集まりです。当センターには山口市以外の会員も多数おり、各地の在宅や施設の障害者が宿泊所としてグループホーム・アルゴを利用しており、多くの障害者のよりどころとなっています。
 昨年5月31日に、私たちが提出させていただいた要望書については、その後8月9日に回答書をいただき、また何件かの物件を紹介していただきました。回答書の中で「市としてもグループホームの設置を研究してまいりたい」という積極的な答えをいただけ、とてもありがたく思っております。その後、グループホームの設置について私たちのほうでも色々と研究してまいりました。他方、家屋については自分たちでも探してまいりましたが、4人で生活できる家屋は見つかっていないのが現状です。
 前回の交渉から1年がたちました。そこで私たちの研究成果を報告したいと思います。
 私たちの現状をふまえ、地方自治の精神にもとづき、市の裁量で身体障害者向けグループホームの設置について検討していただきたいと思います。市行政に対し、以下の処置を要請いたします。
 

身体障害者の自立支援事業に関する要請

1.市による身体障害者用グループホームの設置
 新規建設、民間家屋の買い取り、市営住宅の一棟のグループホーム化などのどれかの実施

2.身体障害者用グループホームの設置に向けた、制度の整備
 公営住宅制度に関する条例の改正など

以上
 

私たちの研究成果の報告

1.障害者福祉に関する、全国的・全世界的傾向について

(1)先進諸国の例をみますと、地域から切り離された大規模施設ではなく、施設を小規模なものとして地域社会に根づいたものにすべきであるとの考えが普及しています。重度の障害者施設などについてもグループホームのように小規模化してこれを身近な地域に配置し、そこから訓練施設に通所したり、そのほかの地域のさまざまな施設を活用していくという流れになっています。このことは、厚労省内の機関である身体障害者福祉審議会の、97年12月9日付けの「今後の障害保健福祉施策の在り方について(中間報告)」においても報告されています。この世界的な流れを受けて、本市でもグループホーム設置に向けてとりくんでいただきたいと思います。

(2)国は「2001年度 厚生労働省の障害者施策基本方針」の中で、「重度の障害者や就労していなくても地域で暮らすことを望む障害者も利用できるよう、グループホーム入居者の就労用件を撤廃し、ホームヘルパーを派遣できることとし、地域生活支援の強化を図ること」と記してあります。市の回答では「身体障害者グループホームの整備につきましては、現在のところ国の補助対象事業としても行われておらず」とありましたが、現在はこのように柔軟に対応するよう国のほうでも指針が出されています。

(3)今年の5月28日に、山口県の障害福祉課と住宅課と、グループホーム設置を求める交渉を行いました。そのおりに以下の3点にわたる発言をいただきました。
●「身体障害者のグループホームていうのは国のほうの制度としてはあるのですね。さっき言うちゃった自立支援事業としてのですね。」障害福祉課課長の藤永さん
●「(グループホーム建設について)『障害者(いきいき)プラン』の中で、どのようにやっていくのか、どのようなやり方するのか。『確かにやる』というのは言いづらいものがありますけど、それは『障害者(いきいき)プラン』をつくっていく中で色々検討していかなくてはならない。『こういうモデルケースつくっていくのも方法ですよ』と、その『障害者(いきいき)プラン』つくる話を出していって、よりよいものをつくっていく方向で進めていくのがいいだろう」障害福祉課主任の三輪さん
●「障害者福祉事業の実施主体は市町村に平成4年からなっているので、県としては市町村をどう指導・支援していくかが役割といいますか。だから市町村と連携して、今年、来年から『障害者(いきいき)プラン』を新しくつくるようになっておるのですけど、そのあたりで重要性なりを検討していきたいと思う。」 障害福祉課課長補佐の藤井さん
 貴市におかれましては、県に協力をあおぎながら、この自立支援事業制度を活用され、さらにモデル事業などの諸制度を柔軟に活用されながら、全身性障害者用のグループホーム設置をされますよう要請します。

(4)本市でも、私たちのような重度身体障害者の数は多く、生活も厳しい状況にあります。私たちのような障害者の場合、基本的な教育も、教育免除というかたちで受けていないので、単身での社会生活を営むことができる人たちは、ごくわずかと思われます。また、生存自体も脅かされています。介護の維持が困難だからと、障害者をかかえた親が子と無理心中をはかるケースが増加しています。県内でも90年から96年までに、障害者(児)に関する心中事件が5件起きており、その中の3件は障害者が50代で親が80代というケースでした。現在の制度状況では、障害者の生活条件が破綻しつつあると感じています。

(5)現在借用しております住宅は、大家さんから今年中を目途に家屋を解体したいむね申し入れがありました(今年1月)。しかしながら、去年私どもで民間家屋をあたりましたが、民間賃貸住宅に障害者が入ることは、住宅改造などをともなうので嫌われるのが現実でした。また、障害者が集団で住むこと自体も嫌われてもいました。このような厳しい状況があるので、私たちは市行政にグループホーム建設への尽力を願う次第です。
 

2.身体障害者が集団生活を営む意義

(1)私たちのような重度身体障害者にとって、幼い頃から受けた差別を客観的に評価することが非常に大事となります。特に私たちは体が動かないことによって、人間関係自体が狭く、関係してきた人たち(親や兄弟など)の考え方や価値観に大きく規定されます。同じような境遇を生き抜いた障害者同士で、自分の障害の総体(体の具合だけではなく)を、知っていくことが社会生活を送る上で、非常に重要になります。自分自身の障害の認知を正しくできなければ、どのようなケアが必要であるかというような判断もできません。このようなことをピアカウンセリングとよび、正しく自分を認識するすべとなります。全国でピアカウンセリングの講習は行われていますが、どれも講習期間は3泊4日程度と、全てをさらけ出し共有するには短すぎるのが現状です。そして重度であればあるほど、年数はかかります。しかしながら、私たちはグループホームをつくることにより、ゆっくり時間をかけながらお互いのことを理解しあい(批判もかねて)、生活をくみたてていけるような成果を生み出しつつあると自負しています。

(2)互いに住むところが離れており、疎遠になりがちな障害者同士の交流をはかるため、私たちは施設交流会やサマーキャンプを毎年おこなっており、それら事業の事務所としてグループホーム・アルゴは活用されています。このような企画は、障害者が地域に出るきっかけとして大きな成果を生みだしています。また地域・施設の障害者からも、これら企画は楽しみにされ、グループホーム・アルゴの公的な設置が1日も早く求められています。

(3)ある私たちの取り組みでは結果的に、年齢や職種、障害者・健全者を問わない幅広い交流がはかられています。私たちの介護は、下は10代から上は70代までの幅広い年齢層の人々によって支えられています。また介護を通じたコミュニケーションを、介護者が一同に会する「介護者会議」においてはかっています。コミュニケーションが軽視されやすい現代社会の中、介護を通して、地域内の幅広い交流が実現されている私たちの取り組みは重要な価値をもっていると思います。

(4)私たちのとりくみは、新しい障害者福祉のありようとして検討されるべきと考えます。当センターがつくりあげてきた蓄積は、山口市民の福祉向上にとって大きなプラスになっていると考えます。私たちは、障害者や高齢者が地域社会の接着剤的役割を果たし、新しい地域社会もうみだしていけると自負しております。
 

質問事項

?前回の回答からの一年間の、市行政の身体障害者用グループホームについての研究成果をお聞きしたいと思います。

?身体障害者に対しても、ピアカウンセリングは極めて重要であると私たちは考えますが、市の見解をお聞きしたいと思います。また私たちは、グループホームの中で日常的にピアカウンセリングを行っておりますが、この取り組みについての市の評価をお聞きしたいと思います。

?「市営住宅のグループホーム化は、公営住宅制度になじまないことからできません」と回答書には記してありました。しかしながら私たちは同意しかねます。まず市営住宅につくるほうが、市行政が福祉に責任を持ちやすいかたちであると思います。また、別途にグループホームを建設するのは多額の予算がかかります。すると地価の関係上グループホームは郊外につくられることとなり、障害者の自立支援上、街中につくられるべきグループホームの姿に反する結果になると思います。この件についての市の考えをお聞きしたいと思います。

?「(私たちの要請するグループホーム設置について)実は制度はある。あなた方が要望していることを総合すると、自立支援事業という制度にあてはまります」という、県の障害福祉課の発言に対する、市の見解をお聞きしたいと思います。

?近々矢原市営住宅が増改築されると聞いておりますが、市営住宅の一部をグループホームとするという方法もありますが、この方法を実現する場合、具体的にはどのようなことが問題になるのでしょうか。お聞かせください。また私たちも一緒になって問題の解決にあたりたいと思いますが、どのような取り組み・手続きが必要とされるかもお聞かせください。

?1997年に「山口市障害者福祉政策」が策定されていると聞き及んでいます。この中身をお聞かせください。また関係資料をいただければと思います。また2003年から国の障害者政策が契約制にかわりますが、市の中でどのような論議がされているのかお聞きしたいと思います。また、契約制への移行を受けて市が新しい政策を策定される際には、ぜひ身体障害者用のグループホーム設置についての前向きな文言を入れてくださるようお願いします。

?山口県が「障害者いきいきプラン」を2003年からスタートさせようとしています。これとの関連性をどのように考えておられますか。お聞きしたいと思います。