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2002年12月18日

衆議院議長
綿貫 民輔  様

心神喪失者医療観察法(案)への抗議と要請

 
 去る11月27日政府が提出した『心身喪失者医療観察保護法(案)』の審議を、直ちに中止してください。

 この心神喪失者医療観察法は、法案の内容は、「社会復帰を促進するための医療を受けさせる必要があると認められるとき」となっておりますが、医療行為であれば、裁判所が関与する必要はないと考えます。何かしら精神障害者を凶悪犯に仕立て上げ、社会から追放するための処置にしか映りません。
 私たち障害者を社会の安全を脅かす存在として位置づけ、隔離してしまうことを合法化するものです。今の社会が私たち障害者を生きづらいものにしているのであり、その結果として障害の進行が進み、発作が起きています。それに加え、現在の障害者に対する医療・福祉のあり方が隔離的なもので、健常者の人と接することがほとんどありません。この状況を放置し、その障害によって事件を起した人を保護観察におくことは、なお障害者に対して差別を助長し、社会の中で生きることを否定することと同じです。

 私たちやまぐち障害者解放センターは、10余年の間、健常者と障害者が一緒に住める社会を目指して、運動しています。私たちの事務局は偶然にも、身体障害者ばかりですが、障害別を問わずあらゆる障害を持つ人たちの、差別からの解放を目指しております。
 私たちの仲間の障害者の中には、長い間施設(療護施設)にいたため、社会で生きていく術を持ちえず、現在学習中の人もいます。先に書いたように、特殊な空間に押し込められることが、なお障害者を社会的自立から遠ざけてしまいます。このような動きに対して、私たちは新しい社会のあり方を模索しています。私たちの考えは、障害の種別をもこえて、私たちを差別する社会構造や思想に対して、闘っていくものであります。そのことからしても、現在提出されている法律案は、許すことはできないものです。

 「心神喪失者医療観察法」のような法律を制定すること自体、民主国家とはいえません。私たち障害者は社会の中で生きる権利を有しているはずであり、そのことは憲法第13条で「国民の生命、自由、幸福の追求に対する権利は、最大の尊重を必要とする」となっています。このことは国が、個人個人を特定し、社会から排除することはできないということを言っています。障害があることをもって病院や施設に隔離し日常生活まで観察することは許されない行為であります。この法案を出した政府は重要な憲法違反をしています。
 国会議員は、憲法99条で、憲法を遵守しなければならないとあり、この法律を通すことは自ら憲法を否定することとなります。貴方方国会議員の存在及び職務は、憲法で保障されているのであり憲法を否定することは自らを否定することであります。あなた自身が、この法案が持つ障害者差別を認識し、法案の審議中止と、廃案にされることを要請します。

やまぐち障害者解放センター
代表  藤井 彰